アルツハイマー病の神経傷害を抑制するペプチド

ペプチド研究所 p3-Alcβ37、p3-Alcβ9-19

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脳由来の分泌ペプチドである、p3-Alcβ が、神経細胞中のミトコンドリアを活性化することにより、アルツハイマー病の原因因子である アミロイドβ が引き起こす神経毒性を抑制することが、北海道大学大学院薬学研究院の鈴木利治特任教授(認知症先進予防・解析学分野)、同大学大学院生命科学院博士後期課程(研究当時)の齋藤 遥氏、浜松医科大学の尾内康臣教授、産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の羽田沙緒里主任研究員、浜松ホトニクス株式会社中央研究所の塚田秀夫主幹、株式会社ペプチド研究所の熊谷久美子サイエンスアドバイザーらの研究グループにより、見出されました。

脳に薬剤を作用させようとすると、血液中の薬剤は血液脳関門(BBB)という強力なバリアによって通過を制限されます。しかし、末梢投与された p3-Alcβ は、アルツハイマー病のマウスモデルの BBB を透過し、アルツハイマー病によって活性が低下したミトコンドリアを活性化させることが明らかになりました。

p3-Alcβ

p3-Alcβ は、37-40 アミノ酸のペプチドです。神経細胞に特異的に発現する膜タンパク質 Alcadeinβ(Alcβ) より、αセクレターゼ と γセクレターゼ で切断され、 Aβ と同じ代謝様式で産生します。
p3-Alcβ は Aβ とは異なり非凝集性のペプチドで、脳神経細胞から脳脊髄液中に分泌されます。

【p3-Alcβ の産生機構】

p3-Alcβ の産生機構

出所:北海道大学プレスリリース

β-アミロイド(Aβ) は神経膜タンパク質 APP より、
p3-Alcβ は神経膜タンパク質 Alcadeinβ(Alcβ)より、
Aβ は βセクレターゼ と γセクレターゼ 、p3-Alcβ は αセクレターゼ と γセクレターゼ による2回の連続する切断を受けて生成し、神経細胞外に分泌される。

p3-Alcβ37、p3-Alcβ9-19

今回の研究で、37 アミノ酸の p3-Alcβ37 の添加により、神経細胞のミトコンドリアが活性化することが明らかとなりました。さらに、p3-Alcβ の機能部位が、9-19番目の 11 アミノ酸 p3-Alcβ9-19 であることが特定され、11 アミノ酸の p3-Alcβ9-19 が、37 アミノ酸のペプチド(p3-Alcβ37)と同様に、神経細胞のミトコンドリアを活性化して、Aβオリゴマーに起因する傷害から神経細胞を保護する作用を有することが見出されました。

p3-Alcβ37、 p3-Alcβ9-19

出所:北海道大学プレスリリース

p3-Alcβ37、 p3-Alcβ9-19 の作用メカニズム

Aβオリゴマー は細胞内への過剰なカルシウムイオンの流入を引き起こし、これが、神経変性の引き金となることが報告されています。解析の結果、 p3-Alcβ37 と p3-Alcβ9-19 は、 Aβオリゴマー による NMDA型グルタミン酸受容体 の異常活性化を介したカルシウム過剰流入を抑制し、 Aβオリゴマー による毒性から神経細胞を守ることが分かりました。

また、ラットを用いた実験で、末梢投与した p3-Alcβ9-19 が血液脳関門(BBB)を透過して中枢神経系に到達し、機能を発揮することが明らかとなりました。

参考文献

Hata, S., Saito, H., Kakiuchi, T., Fukumoto, D., Yamamoto, S., Kasuga, K., Kimura, A., Moteki, K., Abe, R., Adachi, S., Kinoshita, S., Yoshizawa-Kumagaye, K., Nishio, H., Saito, T., Saido, CT., Yamamoto, T., Nishimura, M., Taru, H., Sobu, Y., Ohba, H., Nishiyama, S., Harada, N., Tsukada, H., Ikeuchi, T., Ouchi, Y. and Suzuki, T. : EMBO Mol Med., 15(5), e17052 (2023)

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