反応性代謝物の検出に! 革新的な蛍光トラッピング剤

ペプチド研究所 CysGlu-Dan、 Dap-Dan

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医薬品が、生体内でシトクロムP450 (CYP)等の酵素により代謝を受けて生じる反応性の高い代謝物を、反応性代謝物といいます。反応性代謝物は、タンパク質などの生体内高分子と共有結合を形成し、その機能を不可逆的に阻害するため、重篤な毒性を発現することがあります。近年の創薬研究では、反応性代謝物のリスク評価を開発早期に行うことにより、代謝に伴う毒性を回避し、安全性リスクを減らすことが求められています。

CysGlu-Dan と Dap-Dan は、慶應義塾大学薬学部の大江知之教授らによって開発された蛍光トラッピング剤で、幅広い反応性代謝物の検出・定量が可能です。

CysGlu-Dan

化学的に不安定で高い反応性を有する反応性代謝物は直接検出することが困難であるため、トラッピング剤と反応させて補足し、安定な付加体 (アダクト)として LC/MS などで検出する、簡便な手法が創薬初期段階において、さまざまな製薬企業で応用されています。

シトクロムP450 (CYP)による酸化代謝で生じる反応性代謝物は、その反応性の違いから、HSAB 則に基づいた分類でいう、ソフト あるいは ハード な求電子性化合物に分けられます。ソフトな反応性代謝物はソフトな求核性を示すトラッピング剤と、ハードな反応性代謝物は、ハードな求核性を示すトラッピング剤と反応し、アダクトを形成します。現在汎用されているトラッピング剤である dGSH (Dansyl GSH) は、ソフトな反応性代謝物を効率的に補足し、高感度で検出が可能ですが、アルデヒドのようなハードな反応性代謝物を補足できないことが欠点でした。

CysGlu-Danは、慶應義塾大学薬学部の大江知之教授らによって開発された新規の蛍光トラッピング剤です。ソフト・ハード双方の反応性代謝物を補足し、幅広い反応性代謝物の検出・定量が可能です。

dGSH (Dansyl GSH) は、ハードな反応性代謝物を補足できない
CysGlu-Danは、ソフト・ハード双方の反応性代謝物を補足可能

Dap-Dan

薬物代謝酵素には、上述の シトクロムP450 (CYP) に代表される酸化還元酵素以外に、グルクロン酸抱合酵素等の抱合反応を行う酵素群があります。カルボキシル基がグルクロン酸抱合を受けて生じるアシルグルクロニドは、高い反応性を示す反応性代謝物として知られ、タンパク質をアシル化やグリコシル化することで、その毒性を発現すると考えられています。

Dap-Danは、ジアミン構造をもつため、アシルグルクロニドと安定なアダクトを形成します。従来のトラッピング剤である、ダンシルリジン-フェニルアラニンジペプチド(dKF) と比べ、非常に効率的にカルボキシル基を有する医薬品の反応性代謝物である、アシルグルクロニドの検出・定量が可能です。

参考文献

  1. Shibazaki, C., Ohe, T., Takahashi, K., Nakamura, S. and Mashino, T. : Drug Metab Pharmacokinet., 39, 100386(2021)
  2. Shibazaki, C., Mashita, O., Takahashi, K., Nakamura, S., Mashino, T. and Ohe, T. : Chem Res Toxicol., 34(11), 2343(2021)

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