ワッカー酸化

ワッカー酸化は、PdCl2-CuCl2触媒によるエチレン→アセトアルデヒドの酸化プロセスとして元来開発されました。酸素を酸化剤として用いることができます。また、一般の末端アルケンの酸化にも用いることができ、メチルケトンが得られます。溶媒としてはDMFが多用されます。通常、内部アルケンは反応性に乏しく、末端アルケンのみを選択的に酸化することが可能です。

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基本文献

反応機構

アルケンの酸化はPd(II)、Pd(0)の酸化はCu(II)、Cu(I)の酸化は酸素分子によりなされます。これらのプロセスが協奏的に働くことで触媒サイクルが機能します。

PdとCuが触媒として働くワッカー酸化の反応機構

反応例

末端アルケンのみが選択的に酸化され、内部アルケンやアルデヒドは酸化されない例1)
ワッカー酸化による末端アルケンの選択的酸化の例
Wacker酸化と溝呂木-Heck反応を組み合わせた、高立体選択的な縮環骨格合成の例2)
ワッカー酸化と溝呂木-Heck反応を組み合わせた反応例
銅を用いない反応や酸素のみを酸化剤として用いる例3)
酸素を酸化剤として用いるワッカー酸化の反応例
Fe触媒によるWacker型酸化反応の例4)
鉄触媒を用いるワッカー酸化の反応例

実験手順

1-デカンの酸化5)
ワッカー酸化による1-デカンの酸化反応の例

実験のコツ、テクニック

  • CuClを用いる場合、オレフィンを入れる前に先にアクティベート(室温、1時間)する必要があります。
  • 末端オレフィンをアルデヒドに変換する系も開発されています。
  • 反応系には塩酸が副生するので、酸に弱い化合物などの場合はCuClの代わりにCu(OAc)2を用いるなど工夫が必要です。また、塩基性条件下では反応は進行しません。

参考文献

  1. Tsuji, J.: Synthesis, 5, 369 (1984). DOI: 10.1055/s-1984-30848
  2. Larock, R. C. et al.: J. Am. Chem. Soc.,113, 7815 (1991). DOI: 10.1021/ja00020a083.
  3. (a) Mitsudome, T., Umetani, T., Nosaka, N., Mori, K., Mizugaki, T., Ebitani, K., Kaneda, K.: Angew. Chem., Int. Ed., 45, 481 (2006). DOI: 10.1002/anie.200502886.
    (b) Mitsudome, T., Mizumoto, K., Mizugaki, T., Jitsukawa, K., Kaneda, K.: Angew. Chem., Int. Ed., 49, 1238 (2010). DOI: 10.1002/anie.200905184.
  4. Liu, B., Jin, F., Wang, T., Yuan, X., Han, W.: Angew. Chem., Int. Ed., 56, 12712 (2017) DOI: 10.1002/anie.201707006
  5. Tsuji, J., Nagashima, H., Nemoto, H., Org. Synth., 62, 9(1989). DOI: 10.15227/orgsyn.062.0009

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