再発乳がん研究に

DAIZ Glyceollin I

熊本大学発生医学研究所の中尾光善教授・斉藤典子准教授らは、ヒトの乳がんの再発機序を世界で初めて解明し、その研究成果が「Nature Communications」に2015年4月29日に掲載され世界から注目を浴びました。

本研究で、乳がんの再発過程においてエストロゲン受容体をつくるESR1遺伝子が高発現することに非コードRNA「エレノア」が関わっていることを発見し、さらに植物の二次代謝化合物の一種であるレスベラトロールが、エレノアとESR1遺伝子の発現を阻害し細胞増殖を抑制することを解明しました。

中尾教授らは、本製品「グリセオリンⅠ」を50 µM程度含むフラクションによる同じ細胞アッセイを行った結果、レスベラトロールと同等またはそれ以上に細胞増殖を抑制することが明らかになりました。

DAIZ株式会社では、「グリセオリンⅠ」をはじめ、グリセオリンⅡ~Ⅴ、プレニル化イソフラボン類をラインアップしております。

特長

  • 大豆由来の天然化合物(∴二次代謝化合物∴フィトアレキシン)
  • エストロゲン受容体と結合し関与遺伝子の発現を明確に制御する
  • 再発乳がん研究において細胞増殖抑制活性を有する
  • 核内受容体と結合することからヒストン修飾の関連性が示唆される
  • 幾何異性体が存在しないため実験の再現性が高い

概要

本製品は大豆種子中に誘導された二次代謝物「フィトアレキシン」であり、高いエストロゲン様の活性を有します。エストロゲン受容体が関与するホルモン治療耐性乳がんの研究用試薬として推奨いたします。

また、核内のエストロゲン受容体は、特異的な遺伝子に結合するため、メチル化やアセチル化に代表されるヒストン修飾との関連性も示唆されていることからエピジェネティック研究にも推奨いたします。レスベラトロールのような光による幾何異性体化が起こらないため構造が安定しています。

外観 白色~黄褐色、粉末
溶解性 DMSO、Ethanol、Methanolに可溶
分子量 C20H18O5=338.36
CAS RN® 57103-57-8

乳がん治療後の再発のメカニズム

データ提供:熊本大学発生医学研究所

乳がんの再発の原因となる長期エストロゲン枯渇細胞(LTED)

データ提供:熊本大学発生医学研究所

エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞は、エストロゲンを長期に枯渇すると、ゲノム中のESR1遺伝子とその周囲の部分から非コードRNAのエレノアが誘導されて、エストロゲン受容体を多量につくるように変化します。このようにして、エストロゲン非依存性細胞モデルを作製することで、ホルモン療法が効きにくい状態になった乳がん細胞に作用する化合物のスクリーニングが可能となりました。

長期エストロゲン枯渇細胞(LTED)の増殖抑制に関与するレスベラトロール

レスベラトロールは、長期ホルモン療法によりホルモンが効きにくくなった乳がん細胞(LTED)のエレノアとESR1遺伝子の高発現を阻害し乳がん細胞の増殖を抑制しました。

【MCF7】ヒト乳腺がん 【LTED】長期エストロゲン枯渇によるホルモン療法抵抗性を持つ乳がん細胞。再発乳がん細胞
【LTED-RES】レスベラトロールが結合したエストロゲン受容体 【Eleanor】ESR1遺伝子の活性化に関わるコードされないRNA
【ESR1】エストロゲン受容体をつくる遺伝子【E】エストロゲン【ER】エストロゲンレセプター【RES】レスベラトロール

データ提供:熊本大学発生医学研究所

グラフ : レスベラトロールの処理によるLTED細胞数変化

写真 : レスベラトロールの処理によるLTED細胞の様子

データ提供:熊本大学発生医学研究所

MCF7(左)、LTED(中央)およびLTED-RES (右、LTEDを100 μMレスベラトロールで24時間処理した)細胞におけるER(上、緑シグナル)とエレノア(下、緑シグナル)の様子。ERとエレノアはLTEDで高発現し、レスベラトロールで抑制されます。

(左) ESR1 mRNAはLTED細胞で増加し、レスベラトロール処理(100 μM 、24時間)で抑制されます。
(右) LTED細胞の増殖にER(エストロゲンレセプター)は必要です。

細胞アッセイ:レスベラトロールとの活性比較

本製品:グリセオリンⅠを含む溶液で処理したLTED細胞では、エストロゲン受容体をつくる遺伝子の高発現とエレノアの発現が同時に抑えられ増殖が停止しました。

  • コントロール

    DMSO、24時間、LTED細胞

    エレノアが高発現している再発性乳がん細胞(LTED)は細胞核に緑色に光るシグナルを呈します。
  • レスベラトロール処理

    100 μM、24時間、LTED細胞

    エレノアのシグナルが消え細胞増殖が停止しました。
  • グリセオリンⅠを含むフラクションで処理

    100μM、24時間、LTED細胞

    レスベラトロール同様にエレノアのシグナルが消え細胞増殖が停止しました。相対的細胞数はレスベラトロール以上に減少効果が見られました。

薬剤処理時間による相対的細胞数

データ提供: 熊本大学発生医学研究所

グリセオリン類、プレニル化イソフラボン類

DAIZ株式会社では、グリセオリンI 以外にも希少なグリセオリン類、プレニル化イソフラボンをラインアップしております。

グリセオリン類はイソフラボンにプレニル基が一つ付加されたプテロカルパンと呼ばれる分子骨格を有しております。グリセオリン類やプレニル化イソフラボン類には様々な生理機能が報告されています。

イソフラボン類は、骨粗鬆症の症状の緩和や抗菌活性が報告されています。またプレニル化イソフラボン類は長期の摂取により骨格筋の機能改善の効果が示唆されています。

  • Glyceollin Ⅱ

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • Glyceollin Ⅲ

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • Glyceollin Ⅳ

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • Glyceollin Ⅴ

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • 8-Prenyldaidzein

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • 8-Prenylgenistein

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

  • 4-Prenylcoumestrol (Phaseol)

    外観 : 白色~黄褐色、粉末
    DMSO、Ethanol、Methanolに可溶

参考文献

  • Tomita S. et al.: Nat. Commun., 6, 6966 (2015).
  • Yazaki K. et al.: Phytochemistry, 70, 1739 (2009).
  • Simons R. et al.: J. Agric. Food Chem., 59, 6748 (2011).
  • Nwachukwu I.D. et al.: Food Res. Int., 54, 1208 (2013).
  • Zhang Y. et al.: Oncotarget, 9, 24221 (2018).

製品一覧

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