PEG化剤
ポリマー医薬研究の先駆けナノ医薬の分野において画期的な技術であるPEG化に用いられるPEGのご紹介です。タンパク質の様々な部位に付与することが可能で、荷電した側鎖を持たず、免疫原性を持たないためFDAによって薬剤として承認を受けている物質です。
学術コンテンツ
PEGのユニークな性質
PEG(ポリエチレングリコール)化のパイオニアであるHarris、Veronese、Hermansonらによれば、そのユニークな性質は以下のように記されています。
- タンパク質の様々な部位に付与することが可能です。N末端リシンならびにシステインのチオールなどが主に用いられます。アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基およびC末端も選択肢には入りますが、選ばれることは前述のものに比べると少ないとされています。
- スペーサーならびにクロスリンカーとしても機能させることが可能です。
- 溶解性を向上させますが、荷電した側鎖を持ちません。
- 動物実験の結果免疫原性を持たないことが判明しておりFDAによって内服薬として承認されています。
- PEG誘導体は純粋かつ単分散の短鎖PEG分子から多分散で直鎖状および分岐を持つ長鎖PEGまで各種誘導体を入手可能です。またモノマーであるエチレンオキサイドから様々な分子量、形状のものを選択可能です。さらに、官能基も豊富に選べることから、様々な分子を位置選択的に付与することが可能です。
PEGの物理的及び化学的性質
PEGの物理的・化学的性質は下記のようなものが挙げられます。
- 親水性および疎水性の溶媒いずれにも高い溶解性をします(水やトルエン、ジクロロメタン等を含む様々な有機溶媒など)が、ジエチルエーテル、ヘキサン、エチレングリコールには不溶です。修飾を行うことで、溶解性を向上させることが可能です。
- 水中できわめて大きな運動性と排除体積を持ち、同時に大きな流体力学半径を有します。
- 金属カチオンとの錯体を形成します。
- タンパク質および核酸の精製の際、沈殿法の沈殿剤として用いることが可能です。
- 他のポリマーの水溶液と二層系を形成します。
バイオ医薬及び低分子医薬のPEG化による効果
- PEG化による効果は下記のようなものが挙げられます。
- 結合した分子の溶解性を向上させます。
- 免疫原性を抑制し、免疫寛容を惹起します。
- 体外への排出速度を緩やかにし、薬物動態特性を変化させます。
- 膜透過性を付与します。
- 電気浸透の速度を変化させます。