定量NMR(qNMR)

定量NMR(qNMR)はNMRの化合物中の原子核の数の比がピーク積分比に対応する特性を利用して、化合物の純度や濃度等の定量値を求める方法です。

1H NMR スペクトル上に観察される個々の水素原子核 (プロトン) シグナルの積分比は、分子上のプロトンの数の比に比例します。この現象は、分子内だけでなく分子間においても共通であることから、測定対象物質とは異なる濃度または純度既知の基準物質を添加した試料溶液を調製し、1H NMRスペクトルを測定することにより、基準物質の純度を基準として、測定対象物質の純度をシグナル積分比の関係から迅速に測定することができます。qNMRから得られた定量値は、測定対象物質と基準物質のピーク積分値、プロトン数、調製試料の質量および分子量の関係を用いて算出されるため、吸光度測定等では見逃してしまう残留溶媒や水分等をとらえたより精度の高い値となっています。

当社では、qNMR用の基準物質や標準液、高純度NMR溶媒、その他NMRに使用する製品をラインアップしております。

学術コンテンツ

  • NMRの原理、スペクトルについてはこちら
  • qNMRの基準物質の選定、試料調製についてはこちら
  • 重溶媒の選択についてはこちら
  • NMRのデータ取得 (NMR測定) についてはこちら

定量NMR(qNMR) とは?

上にエタノールと酢酸ナトリウムの1H NMR スペクトルを示します。モル比エタノール:酢酸ナトリウム=2:1の混合溶液では、各シグナルの積分比は6:4:3:2になります。すなわち混合物中の各成分のモル比は、各シグナルに起因する核の数で割り、正規化した積分値の単純な比率によって決定することができます。酢酸ナトリウムのメチル基シグナルは、積分値=3、原子核数=3であるため、3で割ると正規化された積分値が1になります。同様に、エタノールのメチル基 (原子核数=3)、メチレン基 (原子核数=2) 、ヒドロキシ基 (原子核数=1) の積分値は6、4、2であり、正規化するとすべて2になります。したがって、エタノールと酢酸ナトリウムのモル比は2:1であることが分かります。この単純な例は、はるかに複雑な混合物へも拡張することが可能です。qNMR測定では、1つの基準物質に基づいて混合物中の複数の成分を同時に定量することが可能です。すなわち、原理的には一種類の基準物質によって全ての測定対象物質を定量することが可能です。また、さらに重要なことに、qNMRで使用する基準物質は測定対象物質と同一性を有する (同じ種類の化合物である) 必要はありません。この重要な特性によって、qNMRは多くの分野・化合物へ適用可能な手法となっています。

内標準法の種類

qNMRでは分子内・分子間ともに定量が可能で、その種類は、相対定量と絶対定量に分類することができます。相対定量は、分子内の各官能基の原子核数の確認による化学構造のベリフィケーションや、混合物比の確認などに活用されています。一方、絶対定量は、医薬品分析や品質保証の現場において純度や濃度の測定などに活用されています。内標準法は、絶対定量の中でも、公定法への採用をきっかけに活用が広がっている手法です。内標準法の一般的な測定手順を以下に示します。

定量NMR(qNMR)の測定手順

qNMRの測定手順は、その種類に関わらず、おおきく3つのパート (試料調製データ取得データ処理・解析) に分類することができます。測定手順の中で得られた質量や積分値などの情報を、以下計算式に代入することで、サンプルの純度や濃度を測定します1)。qNMRの測定結果にバイアスやばらつきを与える要因は、それぞれのパートに潜在的に含まれていますが、qNMRに適した手順・手法を利用することで精確な測定結果を得ることが可能となります。

  1. Miura T. et al. : Chem. Pham. Bull., 68 (9), 868 (2020).