細胞シート再生医療推進機構 温度応答性スマート細胞培養皿 SSCW®
Smart Surface Culture Ware(SSCW®)は様々な細胞の特性に合わせた培養を可能にし、無傷な状態で細胞を剝離回収するために開発された、新しいポリマーコート技術による温度応答性スマート細胞培養皿(Φ35mmディッシュ)です。
特別な手間なく細胞がしっかりと付着して増殖し、コンフルエントな状態では無理なく細胞を剥離回収することが可能です。
各種細胞の特長にあわせてSSCW-S(標準タイプ), SSCW-L(接着強化タイプ)をご用意しております。
また、ご使用の細胞毎の特徴に合わせたセミオーダー品のご提供も可能です。
※本製品は(株)細川洋行との共同開発製品です。
特長
- 培養皿表面のポリマー特性を温度スイッチで変化させることで、細胞が培養表面の変化を認識して自ら剥がれる高機能のスマート培養皿です。
- 細胞毒性を示すモノマーを使用せず、独自のスマートポリマーのナノコーティング技術により多様な細胞に対応した接着・剥離のコントロールが可能です。
- 細胞に障害を与える酵素処理は一切不要。温度変化のみにより、無傷のままで細胞を剥離回収することが可能です。
- 培養表面に細胞に適したマトリクスをプレコートすることも可能です。
- 個別の細胞特長や培養方法に合わせたセミオーダー品の対応も可能です。
- 袋を開封しやすくするための切れ込み(ノッチ)がついています。
ラインアップおよび適用細胞例
※ 使用目的は研究用に限定しています。
SSCW® | 37℃で培養後に、室温(20-25℃)で細胞シートを剥離回収することができます。 | 細胞種、細胞播種数、培地組成などの培養条件によって、接着性や剥離性が異なる場合がございます。(※) |
シリーズ | 特性 | 適用細胞例 |
---|---|---|
SSCW-S | 接着性が標準的または比較的強い細胞に適しています。 | ヒト間葉系幹細胞(脂肪由来)、ヒト角膜上皮細胞、ヒト皮膚繊維芽細胞(低濃度播種)、C2C12細胞、3T3-L1細胞など |
SSCW-L | 接着性が比較的低い細胞が安定して接着し、シート培養が可能です。 | ヒト間葉系幹細胞 (脂肪由来・骨髄由来・iPS細胞由来)、ヒト皮膚繊維芽細胞(高濃度播種)、ラット脂肪由来間葉系幹細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞など |
セミオーダー品各種 | 接着性が極めて強い細胞のシート剥離や、接着性が極めて低い細胞の安定した接着培養に対応したセミオーダー品を各種用意しました。 | 上皮系細胞、iPS由来細胞、HepG2など各種細胞の接着性の強弱に対応したセミオーダー品情報や、大判ディッシュやインサートについてはお問い合わせください。 |
※ 本製品の培養面に細胞に適したマトリクスをプレコートすることでご使用の細胞が接着しやすくなります。
培養例
SSCW-Sを使用したマウス筋芽細胞株C2C12の接着培養 (提供:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 中山正道講師)
播種濃度:1×105細胞/Φ35mm dish、D-MEM(高グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有 )[製品コード:043-30085]+10% ウシ胎児血清
細胞播種1日後
細胞播種5日後
C2C12シートの写真
C2C12シートの位相差顕微鏡像
SSCW-Lを使用したウシ頸動脈正常血管内皮細胞株BAECの接着培養(提供:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 中山正道講師)
播種濃度:1×105細胞/Φ35mm dish、D-MEM(高グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有 )[製品コード:043-30085]+10% ウシ胎児血清
細胞播種1日後
細胞播種5日後
BAECシートの写真
BAECシートの位相差顕微鏡像
BAECシート剥離(動画4倍速)
使用上の注意事項
基材表面に温度応答性がありますので、培養操作時の温度管理にはご注意ください。
- 【 細胞播種前 】
- 細胞接着が弱い場合には、あらかじめSSCW培養皿へ血清含有培地を入れ、少なくとも30分程度CO2インキュベーターで37℃にプレ・インキュベーションしてください。37℃でのフィブロネクチン等の細胞接着因子のプレコーティングも有効です。
- 【 細胞播種時 】
- 培地の入ったSSCW培養皿の中に細胞懸濁液を加える際には、プレ・インキュベーションした培養皿を冷却しないように、細胞播種作業は少量枚数(2∸4枚)ずつインキュベーターから取り出して行うようにしてください。
- 【 細胞観察時 】
- 顕微鏡観察は、なるべく速やかに作業し培地温度を30℃以下に下げないようにしてください。保温プレートのご使用や観察用と培養用で培養皿を分けられることをお勧めいたします。
- 【 培地交換時 】
- あらかじめ交換する培地を37℃に温め、静かに(培地を器材壁に伝わらせるように)培地交換してください。
- 【 細胞薄利時 】
-
- 20℃恒温槽のご使用をお勧めいたします。恒温槽をお持ちでない場合、クリーンベンチ内で放置する方法もしくは培地を除去後、冷蔵庫で冷却した培地あるいは緩衝液と交換し、その後クリーンベンチ内で放置する方法をお勧めいたします。
- 剥離の際、必要に応じてピペッティング(ピペットを使い培地を出し入れする操作)を併用して剥離を早めることも可能です。
関連論文
温度応答性の実現 | N. Yamada et. al., Makromol.Chem. Rapid Com., 1990 |
DOI:10.1002/marc.1990.030111109 (温度応答性ポリマーによる細胞の接脱着制御) |
---|---|---|
T. Okano et. al., J Biomed. Materials Res., 1993 | DOI:10.1002/jbm.820271005 (革新的細胞回収システム) |
|
T. Okano et. al., Biomaterials, 1995 | DOI:10.1016/0142-9612(95)93257-e (温度応答性表面による細胞剥離) |
|
温度応答性高分子によるナノコーティング技術 | M. Nakayama, T.Okano, et. al., Macromol. Biosci., 2012 | DOI:10.1002/mabi.201200018 |
M. Nakayama, T. Okano, et. al., J. Mater. Chem. B, 2020 | DOI:10.1039/d0tb01113d | |
M. Nakayama, T. Okano et. al., Macromol. Biosci., 2021 | DOI:10.1002/mabi.202000330 | |
SSCWを使用した細胞培養 (血管床による大量の機能的血管網付き立体組織の構築) |
Y. Tobe, et.al., Microvascular Research 141 (May 2022) | DOI:10.1016/j.mvr.2022.104321 |
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