北エステル化反応
ルテニウム触媒存在下、エチニルエチルエーテル試薬を脱水剤として用い、カルボン酸とアルコールからエステルを合成する手法です。
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Chem-Stationについて
特長
1986年、大阪大学 (当時) の北泰行らによって開発された手法であり、ルテニウム触媒存在下、エチニルエチルエーテル試薬を脱水剤として用い、カルボン酸とアルコールからエステルを合成する手法です。
穏和な条件下に進行することが特長であり、副生物も少ないため精製も容易です。酸無水物の合成、アミド化、マクロラクトン化等にも用いることが出来ます。
反応機構
まず、エチニルエチルエーテルがルテニウム触媒により活性化され、カルボン酸と反応します。形成した1-エトキシビニルエステルが、ブレンステッド酸により活性化を受け、アルコールと反応してエステルを与えます。
反応例
Amphidinolide Aの合成1)
マクロラクトン化反応2)
窒素雰囲気下、[RuCl2(p-cymene)]2 (1.2 mg, 1.99μmol) のアセトン (0.5 mL) 溶液に、エトキシアセチレン (21 μL, 0.30 mmol) を0℃でゆっくり加えます。5分攪拌後、13-Hexyloxacyclotridecan-2-one (30 mg, 0.098 mmol) のアセトン溶液を0℃でゆっくり加えます。室温で1時間撹拌後、ルテニウムを中性シリカゲルパッドカラム (酢酸エチルで流す) でろ過し、減圧濃縮することで、エトキシビニルエステル (EVE) が定量的かつ>95%純度で得られます。
粗生成物EVEを1,2-ジクロロエタン (10 mL) で希釈し、DCE (30 mL) で高希釈されたp-TsOH (0.05M in DCE/MeCN (1/1), 0.2mL, 0.01mmol) へ、シリンジポンプで80℃で10時間かけて滴下します。さらに80℃で1時間攪拌後、室温まで冷却します。反応溶液にトリエチルアミン (ca. 0.012mmol) を加え、減圧濃縮します。シリカゲルクロマトグラフィー (hexane/Et2O = 20:1) で精製することにより、所望のラクトンが無色油状物質として得られます (18mg, 収率64%) 。
参考文献
- (a)Trost, B. M., Chisholm, J. D., Wrobleski, S. T. and Jung, M. : J. Am. Chem. Soc., 124, 12420 (2002). DOI: 10.1021/ja027883+
(b)Trost, B. M. and Harrington, P. E. : J. Am. Chem. Soc., 126, 5028 (2004).DOI: 10.1021/ja049292k - Ohba, Y., Takatsuji, M., Nakahara, K., Fujioka, H. and Kita, Y. : Chem. Eur. J., 15, 3526 (2009). doi: 10.1002/chem.200801548
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