TLC用呈色試薬

薄層クロマトグラフィ (Thin-Layer Chromatography:TLC) とは、吸着剤を薄膜状に固定した薄層プレートを用いたクロマトグラフィのことです。

薄層プレートの一端を溶媒に浸すと、吸着剤の間隙を伝い、溶媒が上方に移動してきます(毛細管現象)。プレート上に試料物質が存在すると、溶媒移動に引きずられるように試料も移動していきます。このとき、固定層(吸着剤)への吸着度合いと、移動層(溶媒)への親和性の差異・バランスにより、試料が移動する距離(Rf値)が異なります。この原理を利用し、有機化合物の分離・同定を行います。

TLC分析でよい結果を得るためには、呈色試薬の選択も重要となります。例えば、複数のスポットの中からアミノ基を有する化合物を検出したい場合は、ニンヒドリン試液を用いることにより選択的な呈色が可能です。

以下に汎用的なTLCの呈色試薬と調製試薬、呈色対象化合物を示します。当社では、呈色試薬の原料となる試薬の他に調液済み製品や、使いやすいスプレータイプの製品もご用意しております。用途に合わせてご利用ください。

名称 調液済試薬 試薬1,2) 対象 特長
p-アニスアルデヒド p-メトキシベンズアルデヒド (11 mL) + エタノール (500 mL) + 濃硫酸 (5 mL) 有機化合物全般 化合物の種類によって発色が変化
塩基性過マンガン酸カリウム 過マンガン酸カリウム (5 g) + 炭酸カリウム (33 g) + 水酸化ナトリウム (0.4 g) + 蒸留水 (500 mL) 有機化合物全般 特に酸化されやすい官能基に有効
セリウム-モリブデン酸アンモニウム
(Hanessian染色液)
モリブデン(Ⅵ)酸アンモニウム四水和物 (25 g) + 硫酸セリウム(IV)四水和物 (6 g) + 蒸留水 (450 mL) + 濃硫酸 (50 mL) 有機化合物全般 高感度の発色剤(リンモリブデン酸よりバックグラウンドの色が付きにくい)
バニリン バニリン (24 g) + エタノール (500 mL) + 濃硫酸 (100 mL) 有機化合物全般 化合物の種類によって発色が変化
硫酸セリウム 硫酸セリウム(IV)四水和物 (35 g) + 蒸留水 (400 mL) + 濃硫酸 (36 mL) 有機化合物全般 黄色または茶色に発色
りんモリブデン酸 (PMA) りんモリブデン酸ナトリウムn水和物 (36 g) + エタノール (500 mL) 有機化合物全般 高感度の発色剤
よう素 よう素 有機化合物全般 黄色に発色
塩化鉄(II)
エタノール溶液
塩化鉄(Ⅲ) (1 g) + 蒸留水 (5 mL) + エタノール (95 mL)
水溶液
塩化鉄(Ⅲ) (2 g) + 蒸留水 (100 mL)
フェノール類 フェノール類のスポットが淡黄色の背景に紫、緑、黄褐色等(化合物の種類によって変化)に発色
塩化パラジウム 塩化パラジウム(Ⅱ) (500 mg) + 塩酸 (2.5 mL) + エタノール (100 mL) 含りん化合物、含硫黄化合物 淡黄褐色の背景に含りん化合物は黄褐色~黒色、含硫黄化合物は黄色~橙、褐色に発色
クルクミン クルクミン (100 mg) + [ エタノール 99容量 + 2 mol/L 塩酸 1容量の混液] (→100 mL) ボロン酸誘導体 ボロン酸誘導体のスポットが赤色に発色
ジニトロフェニルヒドラジン (DNP) 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン (1.5 g) + [蒸留水 (10 mL) + 濃硫酸 (10 mL)の冷混液] + [エタノール 1容量 + 蒸留水 3容量の混液] (→100 mL) アルデヒド、ケトン 芳香族ケトン・アルデヒドは橙色、脂肪族では黄色に発色
ドラーゲンドルフ試薬 A 塩基性硝酸ビスマス(Ⅲ) (0.85 g) + 酢酸 (10 mL) + 蒸留水 (40 mL)
B よう化カリウム (8 g) + 蒸留水 (20 mL)
→A 20 mL + B 20 mL + 酢酸 20 mL
含窒素化合物 特に第三級アミン、第四級アミンに有効
ニンヒドリン ニンヒドリン・エタノール試液スプレー ニンヒドリン (1 g) + エタノール (50 mL) α-アミノ酸、アミノ基、アミド基 特に第一級アミン、第二級アミンに有効
ブロモクレゾールグリーン (BCG) ブロモクレゾールグリーン (0.05 g) + エタノール (20 mL) + 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液 (水酸化ナトリウム (0.04 g) + 蒸留水 (10 mL)) (0.72 mL) + 蒸留水 (→100 mL) カルボン酸、スルホン酸 pH5以下の官能基を含む化合物に有効
ローダミンB ローダミンB (100 mg) + エタノール (→100 mL) 長鎖アルキル基を持つ有機化合物、多環芳香族炭化水素化合物 ピンク色の背景に赤色で発色
UV (365 nm) で深赤色に発色

  1. 上村明男訳:「研究室ですぐに使える有機合成の定番レシピ」,(丸善) (2009).
  2. 日本薬局方第17改正より
  • 各処方は調製例であり、処方を保証するものではありません。
  • 本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。
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ニンヒドリン・エタノール試液スプレー

TLC(薄層クロマトグラフィー)においてアミノ基を有する化合物の呈色にはニンヒドリンが用いられています。日本薬局方においては生薬マオウ(麻黄)の確認試験等にニンヒドリン・エタノール試液,噴霧用が用いられます。「ニンヒドリン・エタノール試液スプレー」は2 w/v%ニンヒドリン(エタノール(95)溶液)をスプレーにより噴霧できます。

ニンヒドリンスプレーを用いた人工甘味料の分析

対象化合物
①グルタミルバリルグリシン ②アリテーム ③アドバンテーム

  • 分析条件
    展開溶媒 クロロホルム/メタノール/酢酸/水=30/20/4/6
    混合溶液濃度 ①10 μg/μL, ②2.5 μg/μL, ③2.5 μg/μL
    展開距離 7 cm (飽和展開)
    注入量 4 μL
    TLCプレート シリカゲル70 TLCプレート-ワコー

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調製済試薬

調製用試薬

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