Tsuji-Trost Reaction

辻・トロスト反応

アリルアルコールから誘導されるアリルハライド/エステル/カーボネート/ホスホネートなどを基質とし、パラジウム(0)触媒存在下、さまざまな求核剤を置換反応により導入できます。通称Allylic Alkylation。

基質の適用範囲が広く、穏和な条件で炭素ー炭素結合が合成できる極めて有用な方法です。

モリブデン、イリジウムなどの金属触媒も類似の反応を進行させますが、こちらは内部炭素で置換が起こり、多置換生成物を与えます。

本記事はWEBに混在する化学情報をまとめ、それを整理、提供する化学ポータルサイト「Chem-Station」の協力のもと、ご提供しています。
Chem-Stationについて

反応機構

まずパラジウム(0)に基質が酸化的付加し、π-(η3)-アリルパラジウム中間体を形成します。その後、パラジウムの逆面から求核剤が攻撃し、生成物が得られます。アリル位においては、通常不活性なエステルやカーボネートでも酸化的付加は容易に起きます。これは酸化的付加の前段階において、配位可能なオレフィンが近傍に存在するためです。

通常は酸化的付加および求核攻撃とも立体反転で進行するため、全体として二重反転、すなわち立体保持の生成物を与えます。

しかしながらハード性の高い求核剤を用いた場合には、Pd上へのトランスメタル化→還元的脱離の経路で進行し、求核付加の段階が立体保持になります。この場合は全体として立体反転します。この場合にはリン配位子を加えずに反応を行うことが重要です。

置換は通常最も置換基(立体障害)の少ない炭素上で起こります。

π-アリルパラジウムはσ-(η1)-アリルパラジウムを経由してcis/trans異性化します。この異性化速度は求核付加よりも速く、生成してくるオレフィンの立体化学に留意する必要があります。(環状アリルアルコールの場合にはこの異性化は起こらないので、基質としては比較的扱いやすいです。)

反応例

Baseを共存させておく事で、分枝型成績体を選択的に得る事が可能です。1)

Sordarinの合成2)

分子内辻-Trost反応を用いるとVicinal四級炭素を構築します。

Marcfortine B の合成3)

トリメチレンメタン等価体をPd触媒によって発生させ、[3+2]付加を行っています。

 

参考文献

  1. Dubovyk, I., Watson, I. D. G. and Yudin, A. K. : J. Am. Chem. Soc., 129, 14172 (2007). DOI: 10.1021/ja076659n
  2. Chiba, Y., Kitamura, M. and Narasaka, K. : J. Am. Chem. Soc., 128, 6931 (2006). DOI: 10.1021/ja060408h
  3. Trost, B. M., Cramer, N. and Bernsmann, H. : J. Am. Chem. Soc., 129, 3086 (2007). DOI: 10.1021/ja070142u

基本文献

  • Tsuji, J., Takahashi, H. and Morikawa, M. : Tetrahedron. Lett., 4387 (1965). doi:10.1016/S0040-4039(00)71674-1
  • Trost, B. M. and Fullerton, T. J. : J. Am. Chem. Soc., 95, 292 (1973). DOI: 10.1021/ja00782a080
  • Tsuji, J., Shimizu, I., Minami, I., Ohashi, Y., Sugiura, T. and Takahashi, K. : J. Org. Chem., 50, 1523 (1985). DOI: 10.1021/jo00209a032
  • Frost, C. G., Howarth, J. and Williams, J. M. J. : Tetrahedron: Asymmetry, 3, 1089 (1992). doi:10.1016/S0957-4166(00)82091-1
  • 辻二郎, 有機合成化学協会誌, 57, 1036 (1999).

製品一覧

  • 項目をすべて開く
  • 項目をすべて閉じる

パラジウム触媒に関する製品情報はこちらをご確認ください。

  • 掲載内容は本記事掲載時点の情報です。仕様変更などにより製品内容と実際のイメージが異なる場合があります。
  • 掲載されている製品について
    【試薬】
    試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。
    試験研究用以外にご使用された場合、いかなる保証も致しかねます。試験研究用以外の用途や原料にご使用希望の場合、弊社営業部門にお問合せください。
    【医薬品原料】
    製造専用医薬品及び医薬品添加物などを医薬品等の製造原料として製造業者向けに販売しています。製造専用医薬品(製品名に製造専用の表示があるもの)のご購入には、確認書が必要です。
  • 表示している希望納入価格は「本体価格のみ」で消費税等は含まれておりません。
  • 表示している希望納入価格は本記事掲載時点の価格です。