向山アルドール反応
通常酸・塩基で促進される古典的アルドール反応は可逆反応であり、エノラート生成時の立体制御が難しく、複雑な混合物を与えます。
1970年代の向山らによる研究で、単離生成・長期保存可能なシリルエノールエーテル・ケテンシリルアセタールなどを求核剤に用い、交差アルドール反応を進行させることができるようになりました。
実験室レベルでは有用な反応であり、様々な複雑化合物の合成へと応用されています。
アクティベーターのLewis酸は触媒量で済む条件も多く、フッ素アニオンなどのLewis塩基もシリルエノールエーテルのアクティベーターとして使えます。
様々な不斉触媒を用い、触媒的不斉合成への適用も活発に行われています。
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反応機構
ケイ素のルイス酸性は弱く、カルボニルへの配位は起こりにくいです。六員環遷移状態をとれず、線形遷移状態で反応が進行します。シリルエノラートの幾何異性によらずsyn体が主生成物として得られる傾向にありますが、リチウムエノラートやボロンエノラートなどに比較して、遷移状態の配座自由度が高いため、高い選択性を発現させることは困難となります。立体要因および双極子効果に大きく依存します。
反応例
シリルエノールエーテルを用いる向山アルドール反応
触媒的不斉向山アルドール反応の例1)
一般にアセテート由来のエノラートは立体規制要因が少なく、選択性の発現が難しいと言われています。Carreiraらはこの点を解決した不斉触媒の開発に成功しています2)。
ランタントリフラートは水系溶媒でも失活が遅いため、ホルムアルデヒド水溶液をそのまま不斉向山アルドール反応に用いる事が出来ます3)。
Denmark4a, b)および柴崎4c)らによって、一般に低選択性・低反応性傾向にある非活性化型ケトンへの触媒的不斉アルドール反応が報告されています。
アルデヒド由来のシリルエノールエーテルを調製し、アルドール付加させることは困難をきわめます。かさ高いトリス(トリメチルシリル)シリル(TTMSS)基をもつエノールエーテルは、付加後生じるアルデヒドへの過剰付加を抑制します。このため、アルデヒド等価な求核剤として向山アルドール反応に使用できます。5)
Lewis塩基活性化型・向山タイプアルドール反応6)
実験手順
トリフルオロメタンスルホン酸イミド(HNTf2)触媒を用いる向山アルドール反応7)
参考文献
- (a) Mukaiyama, T., Kobayashi, S., Uchiro, H. and Shiina, I. : Chem. Lett., 129 (1990). doi:10.1246/cl.1990.129
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- (a) Kobayashi, S. et al. : J. Am. Chem. Soc., 126, 12236 (2004). DOI: 10.1021/ja047896i
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(b) idem. J. Am. Chem. Soc., 129, 2762 (2007). DOI: 10.1021/ja0693542
(c) Boxer, M. B., Akakura, M. and Yamamoto, H. : J. Am. Chem. Soc., 130, 1580 (2008). DOI: 10.1021/ja7102586
(d) Boxer, M. B. and Yamamoto, H. : Org. Lett., 10, 453 (2008). DOI: 10.1021/ol702825p - Song, J. J., Tan, Z., Reeves, J. T., Yee, N. K. and Senanayake, C. H. : Org. Lett., 9, 1013 (2007). DOI: 10.1021/ol0630494
- Saito, S., Nakadai, M. and Yamamoto, H. : Synlett, 1245 (2001). DOI: 10.1055/s-2001-16055
基本文献
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- Mukaiyama, T., Izawa, T. and Saigo, K. : Chem. Lett., 323 (1974). doi:10.1246/cl.1974.323
- Mukaiyama, T., Banno, K. and Narasaka, K. : J. Am. Chem. Soc., 96, 7503 (1974). DOI: 10.1021/ja00831a019
- Mukaiyama, T. : Org. React., 28, 203 (1982).
- Mukaiyama, T. and Kobayashi, S. : Org. React., 46, 1 (1994). doi: 10.1002/0471264180.or046.01
- Denmark, S. E., Stavenger, R. A. and Wong, K.-T. : Tetrahedron, 54, 10389 (1998). doi:10.1016/S0040-4020(98)00493-1
- Groger, H., Vogl, E. M. and Shibasaki, M. : Chem. Eur. J., 4, 1137 (1998).
- Mukaiyama, T. : Tetrahedron, 55, 8609 (1999). doi:10.1016/S0040-4020(99)00437-8
- Mukaiyama, T. : Angew. Chem. Int. Ed., 43, 5590 (2004). doi:10.1002/anie.200300641
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Lewis酸
HNTf2
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