教育用 Educationシリーズ「カラムクロマトグラフィー実験キット-光合成色素分離-」
高校生物の教科書で取り上げられている「光合成色素の分離」をテーマとしたキットです。
キットに添付されたスピルリナ(藍藻類)やクロレラ(緑藻類)タブレットから色素を抽出し、簡易カラムクロマトグラフィーに供することにより、クロロフィルなどの光合成色素を手軽に分離、分取することができます。光合成に関連する色素について理解を深めることができます。
粉末シリカゲルを用いることで、クロマトグラフィー技術のもう一つの柱であるカラムクロマトグラフィーを体験できます。
スピルリナから分離される色素類 |
A:カロテノイド B:クロロフィルa |
クロレラから分離される色素類 |
C:クロロフィルa D:クロロフィルb |
スピルリナとクロレラが持っている光合成色素の違いがわかります。 |
特長
- ペーパークロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィー(TLC)と同じクロマトグラフィー法の一種として知られる「カラムクロマトグラフィー」を体験できる
- 身近な植物の光合成色素が、溶液の状態で分取できる
- キットに添付の植物サンプル(スピルリナ(藍藻類)、クロレラ(緑藻類))を用いることで、藍藻類と緑藻類が持っている主な光合成色素の違いがわかる
- メタノールのような有機溶媒に可溶な色素と、水に可溶な色素が存在することを体験して学べる
- 光合成色素が食品添加物などに活用されていることを目で見て理解できる
カラムクロマトグラフィーの原理
クロマトグラフィー(Chromatography)は、固定相と移動相の二相間と物質との吸着、分配などの相互作用により物質を分離する方法です。物質を含む移動相が固定相に流れることにより混合物を成分物質に分離することができます。
移動相への親和性が大きい物質は移動相と共に速く溶出し、固定相と親和性が大きい物質は移動が遅く、ゆっくりと溶出します。
カラムクロマトグラフィーは、固定相となるクロマト用充填剤をガラス管など管状容器(カラム)に充てんし、液体の移動相を流すことで、混合物を個々の成分に分離するもので、クロマトグラフィー法の一種です。
- TLCとの違い
どちらも混合物を単一成分に分離する方法ですが、カラムクロマトグラフィーでは物質を溶液の状態で分取することができます。
実験手順
所要時間の目安
Ⅰ.色素の抽出 40分~1時間
Ⅱ.カラムクロマトグラフィー 50分~1時間(*)
*:作成したカラムの流速の違いによって時間が異なります。
注意点
- 水溶性色素の分離は終夜をかけて行いますが、卓上遠心分離機があれば終夜の工程が短縮できます。
- 展開溶媒は揮発性が高いため保存には適しません。そのため、分離した色素は当日中に観察することをおすすめします。
- 抽出した色素は、翌々日までに使用してください。
観察
1:有機溶媒に溶け、簡易カラムで分画された色素を観察する
カラムクロマトグラフィーでは、成分物質が溶液の状態で分取できます。スピルリナもクロレラも、おおむね4つの画分に分けることができます。
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クロレラにはスピルリナほど多くのカロテノイドが含まれていないため、第1画分の色が異なります。
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スピルリナ クロレラ 第1画分 橙色~黄色 薄い緑色 第2画分 青緑色~濃い緑色 青緑色~濃い緑色 第3画分 黄色~薄い緑色 緑色 第4画分 薄い黄色 薄い黄色 スピルリナ
カロテノイドが第1画分に、クロロフィルaが第2画分に分取されます。
クロレラ
クロロフィルaが第2画分に、クロロフィルbが第3画分に分取されます。
応用
- 分取した色素を分光光度計で測定すると、それぞれの吸収スペクトルが得られます。
- 教科書や図録のグラフと比較すると、色素と波長の関係についての理解を深めることができます。
おおよそのピークトップ
クロロフィルa | 430 nm | 670 nm |
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クロロフィルb | 450 nm | 640 nm |
カロテノイド | 460 nm | 500 nm |
そのほかの画分は、カロテンやクロロフィルが薄められたものと推測されます
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光合成色素「スピルリナ」の吸収スペクトル
第1画分の吸収スペクトルは約400-500 nmの領域に吸収の山があり「カロテノイド」の一種のβ-カロテンの吸収領域と、ほぼ一致することがわかります。
第2画分の吸収スペクトルは430 nm,660 nm付近に吸収のピークがあり「クロロフィルa」の極大吸収波長とほぼ一致することがわかります。
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光合成色素「クロレラ」の吸収スペクトル
第2画分の吸収スペクトルはスピルリナと同様に430 nm,660 nm付近に吸収のピークがあり「クロロフィルa」の極大吸収波長とほぼ一致することがわかります。
第3画分の吸収スペクトルは450 nm,640 nm付近に吸収のピークがあり「クロロフィルb」の極大吸収波長とほぼ一致することがわかります。
2:水に溶け、簡易カラムで分画された色素を観察する
スピルリナは、鮮やかな青色色素を持っていることがわかります。一方でクロレラには、そのような青色色素はみられません。
スピルリナ水溶性画分の吸収スペクトル
水溶性の青色色素はフィコシアニンであり、そのピークは620 nm付近にあります。鮮明で明るい清涼感のある青いフィコシアニンは、藍藻類の名前の由来にもなっているもので、お菓子などの天然の青色着色料として用いられています。
応用実験映像「カラムクロマトグラフィー利用シリーズ」
カラムクロマトグラフィー実験キットのカラムで分離した色素を使った高校生物実験をご紹介しています。代謝・光合成についてのさまざまな応用実験へつなげることができます。
高校生物実験「ワインレッドに光るクロロフィル」 -クロロフィルが赤色蛍光を発するのはなぜ?-
カラムで分離した色素を使って、クロロフィルが赤色に光ることを観察します。 カロテンやキサントフィル類との比較し、クロロフィルがワインレッドに光る原理が学習できます。 |
高校生物実験「TLC(薄層クロマトグラフィー)による光合成色素の分離」
新課程で採用されているTLC実験について、展開溶媒の種類による分離の違いも映像でわかりやすく比較されています。 |
高校生物実験「TLC、ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の分離」(微速度撮影)
色素が溶媒で展開していく様子を映像で見ることができます。 TLCとペーパークロマトの分離の様子が端的に比較説明されています。 |
製作:京都市立紫野高校 矢嶋正博先生
キット以外に必要なもの(10班分)
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試薬
- メタノール・・・約 30 mL
- アセトン・・・約 120 mL
- ヘキサン・・・約 500 mL
- 塩化ナトリウム・・約 3 g
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あれば便利な装置
- 小型の超音波洗浄機 1台
- 卓上遠心分離機 1台
- 分光光度計 1台
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主な器具、設備
- カラムスタンド
- ドラフトチャンバー
- 駒込ピペットまたはディスポスポイト
- 乳鉢・乳棒
- ガラスビーカー
- フタ付きガラス瓶
- メスシリンダー
- マイクロチューブ(遠心分離機がある場合)
製品一覧
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