再生医療等製品に!アニマルフリーで穏やかな細胞分散

合同酒精 ディスパーゼ

ディスパーゼはペプチド鎖の中性、非極性アミノ酸のN末端側を切断する金属プロテアーゼです。
組織から上皮細胞をシート状に剥離させることができ、古くから初代培養のための細胞分離および分散に利用されてきました。また、トリプシンやコラゲナーゼなどのプロテアーゼと作用が異なり、細胞障害が少なく、より穏やかな細胞分散を示す特徴から、ES・iPS細胞など再生医療の分野でも応用されています。
本製品は、動物由来原料不使用の製品です。

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製品情報

DISPASE Ⅰ DISPASE Ⅱ
性状 結晶酵素、滅菌品 粉末酵素、非滅菌品
包装形態 6バイアル 1 g
酵素活性 10,000-13,000 PU / バイアル 300,000-360,000 PU / g
添加物など 製品中に酢酸カルシウムを含む。 製品中にデキストリン及び、酢酸カルシウムを含む。
保存・有効期限 2~10 ℃で製造後2年間 (未開封)
溶解後は-20 ℃以下で凍結保存し、6ヶ月以内に使用して下さい。

特長

  1. ディスパーゼはPaenibacillus sp. (旧名:Bacillus polymyxa) 由来の中性金属プロテアーゼです。
    活性中心にZn2+を持ち、その活性はCa2+により安定化されます。
  2. 血清中の成分により酵素活性が阻害されることはほとんどなく、血清の有無に関わらず使用可能です。
    酵素反応の停止は、EDTAの添加や反応液の希釈で簡単にできます。
  3. 基底膜を構成するⅣ型コラーゲンやフィブロネクチンをよく分解する特徴があり、上皮細胞を組織からシート状に剥離させることが可能です。
  4. トリプシンやコラゲナーゼなどのプロテアーゼと作用が異なり、細胞障害が少なくより穏やかな細胞分散を示します。
  5. 作用条件が比較的広範囲であることから、酵素濃度、処理時間、温度およびpHを種々の条件にして酵素を作用させることが可能です。
  6. 細胞培養温度として一般的な37℃において安定であり、細胞種によっては本製品を培地に添加することで浮遊培養が可能となります。
  7. 本製品には、動物由来原料の使用はなく、マイコプラズマの混入はありません。

作用条件・使用例

酵素濃度 100~2,000 PU/mL
溶解液 Ca2+を含む緩衝液、または培地 (血清を含んでも良い)
反応時間 30分~数日間
反応温度 室温~37℃
反応pH 6.5~9.0
阻害因子 EDTA, Fe3+, Fe2+, Ni2+, Cu2+, Al3+, Zn2+

※1PUとは、カゼイン分解法により、1分間に1 μgのチロシンを遊離する酵素活性をいう。

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細胞分散試験

アプリケーション例

使用されたアプリケーション 使用濃度 反応時間
細胞培養機材からの人線維芽細胞シートの剥離 10 PU/mL 1時間
細胞培養機材からのヒト表皮細胞の剥離 1000 U/mL 2時間
ヒト皮膚の表皮層と真皮層の分離 2000 U/mL 2時間
ヒト粘膜組織からの上皮組織と真皮組織の分離 1000 PU/mL 16時間
ヒト皮膚の表皮層と真皮層の分離 1000 U/mL 12時間
ヒト皮膚の表皮創と真皮層の分離 250 U/mL 24時間
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)の剥離 1000 U/mL 20分間
ヒト歯髄組織からの細胞の分散 60 U/mL 20分間
ヒト歯髄組織からの歯髄細胞の分離 2% 1時間
ヒト口腔内縁粘膜上皮層からの上皮細胞の単離 1000 PU/mL 16時間
マウス、ラット、ヒト眼球からの虹彩色素上皮の単離 1000 U/mL 40分間
マウス背部皮膚からの表皮と真皮の分離 500 U/mL 18時間
マウス皮膚の表皮組織と真皮組織の分離 500 U/mL 16時間
マウス皮膚切片からの表皮の剥離 5 mg/mL 30分間
マウス皮膚切片からの表皮の剥離 5 mg/mL 18時間
ラット空腸粘膜からの小腸上皮細胞の剥離 2 mg/L 30分
ウサギ角膜からの角膜実質細胞の単離 1000 U/mL 1時間
魚類生殖細胞の分散 1.65 mg/mL 2時間

※ディスパーゼの効果は、細胞の種類および培養の状況によって異なります。
100~2,000 PU/mLの推奨濃度を目安に、最適な条件をご検討ください。

Q&A

ディスパーゼⅠとⅡについて

Q. ディスパーゼⅠとⅡの違いは?
A. ・ディスパーゼⅠ:結晶酵素、滅菌品、酢酸カルシウムを含む
・ディスパーゼⅡ:粉末酵素、非滅菌品、デキストリン及び、酢酸カルシウムを含む (溶解後に必要に応じてフィルター除菌を行う)
※ⅠとⅡ精製度に多少の違いがあります(Iの方が精製度が高い)。
Q. ディスパーゼⅠとⅡ、それぞれの使用上の注意点や、実験系の向き不向きはあるか?
A. 多くの細胞種・実験系で使用されておりますが、向き不向きの情報はありません。
使用上の注意点は、包装形態の違いから、開封後の保存状態により、使用感に変化が生じる可能性が考えられます。
・ディスパーゼⅠ:真空密栓で基本的には使い切り
・ディスパーゼⅡ:粉末を分取して使用

バルク(大入り包装)について

Q. バルクでの提供は可能か?
A. ディスパーゼⅡは100g単位で可能です。お問い合わせください。
Q. バルク品と通常品で違いはあるか?
A. 特に違いはございません。

特注対応について

Q. 特注対応は可能か?
A. ご注文の量によっては追加試験などのご相談が可能です。
弊社販売代理店または弊社営業担当者へお問い合わせください。

使用法について

Q. 推奨濃度はあるか?
A. 推奨濃度については、添付文書記載の通り、100 ~ 2,000 PU/mLとしております。
まずはこの濃度範囲でご検討頂ければと思います。
Q. 上皮細胞をシート上に剥離する際のunitはどの程度か?
A. 酵素の効果は、細胞の種類および培養の状況によって異なる為、
明確な推奨濃度についてはお答えできません。
添付文書にある100~2000PU/mLを目安に、最適な条件をご検討頂ければと思います。
また、同じ添加量で使用した場合、ⅠとⅡで使用感としては大きな違いはないと考えられます。
Q. Ca2+が活性の安定性に関わっているとあるが、Ca2+を含まないPBS(-)やHBSSでは作用しなくなってしまうのか?
A. 添付文書記載の通り、リン酸系緩衝液で使用した際には白色沈殿や酵素活性、安定性が低下する可能性があります。その為、できるだけリン酸系の緩衝液を避け、(+)の条件でご使用頂くのが良いと考えます。
Q. PBS (-)でも使用可能なのか?
A. 使用自体は可能ですが、酵素活性や安定性は低下する可能性があります。添加量(濃度)を調節頂き、溶解後は速やかにご使用ください。
Q. 使用する際のCa2+の推奨濃度はあるのか?
A. 数mM程度で十分に作用可能です。
Q. 溶解液としてカルシウムを含む緩衝液または培地とあるが、ウシ胎児血清(FBS)入り培地を用いる場合、濃度は10%でよいか?
A. 問題ありません。

他社ディスパーゼとの比較

Q. 他社ディスパーゼの活性を合同酒精ディスパーゼの活性に換算することはできるか?
A. 比較データを持ち合わせていないため、できません。

容器について

Q. ディスパーゼの容器内で直接溶解できるか?
A. ・ディスパーゼⅠ:10mlまでは実績があります。
・ディスパーゼⅡ:活性が高いため、完全に溶解させることはできません。

作用について

Q. Ⅳ型コラーゲンやフィブロネクチンを分解と記載しているが、他の基底膜タンパク質は分解されるのか?
A. ラミニンへの作用は弱いと言われています。
Q. ディスパーゼ処理により、細胞生存率や細胞の遺伝子に影響はあるか?
A. 細胞生存率は、条件により大きく変動します。また遺伝子への影響については未確認です。

参考文献

  1. Matsumura T, et al. : Jpn. J. Exp. Med. 45, 377-382 (1975).
  2. Matsumura T, et al. : Jpn. J. Exp. Med. 45, 383-392 (1975).
  3. Rheinwald JG, et al. : Cell. 6, 317-330 (1975).
  4. Green H, et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 76, 5665-5668 (1979).
  5. Kawakita T, et al. : Invest. Ophthalmol. vis. Sci. 50, 4611-4617 (2009).
  6. Kitano Y, et al. : Br J Dermatol. 108, 555-560 (1983).
  7. Thomson J.A, et al. : Science. 282, 1145-1147 (1998).
  8. Yan X, et al. : Stem Cells Dev. 19,469-480 (2010).
  9. Kurt S. Stenn, et al. : J. Invest. Dermatol. 93, 287-290 (1989).

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