均一系還元触媒
アルケンへの均一系触媒を用いる水素化。水素は syn 付加する。また、アルキンからも同様にアルカンを得ることができる。均一系のメリットは条件の穏和さおよび化学選択性にある。他方、触媒の分離・後処理が不均一系のそれと比してやや面倒なこともある。
DIPAMP を創製し L-DOPA の工業化に成功した W.S.Knowles、および BINAP の創製者である野依良治は 2001 年のノーベル化学賞を受賞している。
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反応機構
Wilkinson錯体の場合、オレフィンの挿入段階が律速なので、配位しやすい基質ほど反応しやすい。このため反応性は下に示す順列に従う。
反応例
Schrock-Osborn触媒やCrabtree触媒のようなカチオン性触媒は、近傍に配位性官能基が存在すると、触媒配向により立体選択的還元を起こせる 1)。
オレフィン選択的還元の例。ニトロ基、ニトリル、カルボニルなどは還元されない。ただしアルデヒドが存在すると脱カルボニル化が進行するので、用いることが出来ない。
L-DOPA合成の不斉水素化工業プロセス
Taxolの合成 2)
ジアミン配位子を加えると、化学選択性が劇的に変化する。アミンのプロトンがカルボニル酸素と相互作用した遷移状態をとるためだと考えられている。
実験手順
ニトロアルケンの還元 3)
実験のコツ・テクニック
通常 Wilkinson 錯体と呼ばれるロジウム錯体が FirstChoice として用いられるが、反応性の低い四置換オレフィンは還元できない。イリジウムを中心金属とする Crabtree 触媒を用いると四置換オレフィンでも反応は進行する。
キラルな二座不斉リン配位子を用いる不斉水素化テクノロジーは、現代までに高度な発展を見せ、いくつかのプロセスが工業化に至っている。中でも、以下に示す配位子が歴史的・実用的には重要とされる。
参考文献
- (a) Crabtree, R.H. and Davis, M. W. : J. Org. Chem., 51, 2655 (1986). DOI: 10.1021/jo00364a007
(b) Brown, J. M.and Hall, S. A. : Tetrahedron Lett., 25, 1393 (1984). doi:10.1016/S0040-4039(01)80167-2 - Wender, P. A. et al. : J. Am. Chem. Soc., 119, 2755(1997). DOI: 10.1021/ja9635387 DOI: 10.1021/ja963539z
- Harmon, R. E., Parsons, J. L., Cooke, D. W., Gupta, S. K. and Schoolenberg, J. : J. Org. Chem., 34, 3684 (1969). DOI: 10.1021/jo01263a122
基本文献
- Wilkinson catalyst: (a) Osborn, J. A., Jardine, F. H., Young, J. F. and Wilkinson, G. : J. Chem. Soc. A, 1711 (1966). doi:10.1039/J19660001711
(b) Harmon, R. E., Gupta, S. K. and Brwon, D. J. : Chem. Rev., 73, 21 (1973). DOI: 10.1021/cr60281a003 - Birch, A. J. and Williamson, D. H. : Org. React., 24, 1 (1976).
- Crabtree catalyst: (a) Crabtree, R. H. : Acc. Chem. Res., 12, 331 (1979). DOI: 10.1021/ar50141a005
(b) Crabtree, R. h. and Davis, M. W. : J. Org. Chem., 51, 2655 (1986). DOI: 10.1021/jo00364a007 - Asymmetric Hydrogenation: (a) Ojima, I., Clos, N. and Bastos, C. : Tetrahedron, 45, 6901 (1989). doi:10.1016/S0040-4020(01)89159-6
(b) Gridner, I. D. and Imamoto, T. : Acc. Chem. Res., 37, 633 (2004). DOI: 10.1021/ar030156e
製品一覧
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均一系水素化錯体
配位子
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