酸添加剤

Boc基の脱保護やアミンの塩酸塩形成は、塩酸存在下で反応が進行します。
有機溶媒中の反応では塩化水素ガスを吹き込みますが、腐食性の高い塩化水素のボンベを常備するのはなかなか大変です。

そこで当社では塩酸酸性条件を簡便にご利用いただけるようにするため、塩化水素を一定濃度で導入した有機溶媒をご提案しています。また、後処理が簡便であり様々な使い方ができる固体酸触媒をご用意しています。用途に合わせてご検討ください。

学術コンテンツ

ブレンステッド酸

酸・塩基は有機合成における基本的な概念です。有機反応は物質間の正電荷と負電荷が接近して開始する場合が多いためです。その正電荷を与える代表例がブレンステッド酸です。ブレンステッド酸は、ブレンステッド-ローリーの定義における「相手にプロトン(H+)を与える物質」となります。

ブレンステッド酸の種類

ブレンステッド酸は炭素を含まない無機酸と炭素を含む有機酸に分類されます。
有機反応にはこれらの酸を反応点とする反応や、プロトンを供与する性質を用いた酸触媒反応などがあります。使用する際には酸性度、基質の溶解性などによって多くの選択肢があります。

無機酸・・・塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、ほう酸 など
有機酸・・・酢酸、安息香酸などのカルボン酸の他アルキル基、アリール基を含むスルホン酸、各種炭素を含むりん酸、ほう酸など

ブレンステッド酸の働き

ブレンステッド酸は様々な用途で使用されますが、基本的なところでは、以下のような反応に用いられます。
・塩基との中和反応(NH3+HCl→NH4Clなど)や、
・酸触媒としての活用(エステル化、加水分解、アセタール化など)
・脱保護反応(脱Boc基、脱TMS基など)

また、ビナフトール骨格を持つりん酸は強力なキラルブレンステッド酸として知られています。例えば、イミンに対するシリルエノラートの求核付加反応によって、βーアミノカルボニル化合物を合成する際の触媒として有効であると報告されています1)

さらに、固体の表面にある酸性部位が酸触媒として働く物質は、固体酸触媒と呼ばれ、産業界でも広く活用されています。ゼオライト、アルミナや硫酸ジルコニアなどが挙げられます2)

参考文献

1) 和光純薬時報,72,2(2004).

2) 尾中 篤, 關 祐威, 増井 洋一:有機合成化学協会誌, 63,492(2005) 
  DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.63.492