イオン液体合成材料

イオン液体の合成法の一つにアニオン交換法があります。カチオンのハロゲン塩と、目的とするアニオンの塩を反応させる手法であり、高収率で新しい性質を有するイオン液体が調製されます。カチオンとアニオンの組合せにより比較的自由に分子を設計することができ、用いる用途によって様々な物性 (融点、粘度、電気伝導率など) を設計できます。ここで紹介しておりますパーフルオロアルキル基や含フッ素系のアニオン種は、そのプロトン体が強酸性であることから原料であるハロゲン塩と素早く交換できるアニオン源です。

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イオン液体の合成法1)

市販されていないイオン液体は、対応する原料から合成することができます。これらの合成でよく用いられるのがメタセシス法です。市販されているオニウム塩のハロゲン化物に対して、より強い酸の金属塩を反応させるアニオン交換反応の形態が良く用いられます。交換後のイオン液体が疎水性であれば、水洗・分液操作によって副生した水溶性のハロゲン化金属塩が除去できます2)。水洗工程が完了したかどうかは、硝酸銀を添加した際の沈殿の有無で判断します。

メタセシス法によるイオン液体の反応式、副生成物が水洗で除去できるケース

金属のコンタミを避けたい場合や、生成したイオン液体が親水性を示して抽出・水洗操作ができない場合などは、原料としてアニオン部位のプロトン酸を用い、生じたハロゲン化水素を減圧条件等で除去する方法があります3)

メタセシス法によるイオン液体の反応式、副生成物が気体になるケース

また、溶解性に乏しい金属塩を活用する方法として、アニオン部位のAg塩を用いる方法があります4)。析出した塩を固液分離することで副生成物を除去します。

メタセシス法によるイオン液体の反応式、副生成物を固液分離するケース

参考文献

  1. 邑瀬邦明: めっき技術「イオン液体の基礎(第2回)~イオン液体の特徴と合成法~」
    2013, 26(4),49-58.
  2. Looser, A., Barmet, C., Fox, T., Blacque, O., Gross, S., Nussbaum, J., Pruessmann, K. P., Alberto, R: Inorg. Chem., 57, 2314 (2018). DOI: 10.1021/acs.inorgchem.7b03191
  3. Bhargava, S.,Soni, P., Rathore, D.: J. Mol. Struct., 1198, 126758 (2019).
    DOI: 10.1016/j.molstruc.2019.07.005
  4. Bruce, D. W., Gao, Y., Canongia, L., Jose, N., Shimizu, K., Slattery,J. M.: Chem. Euro. J., 22, 16113 (2016). DOI: 10.1002/chem.201602965