蛍光プローブ (神経)

神経細胞やそれらによって形成される神経回路を可視化することで、神経による情報伝達がどのようなメカニズムで行われているかを理解することができます。神経細胞や神経回路の標識では順行性もしくは逆行性トレーサーを使用します。また顕微鏡をはじめとする観察技術の向上により、シナプスなどの微細構造の観察も可能になりました。当社ではニューロントレーシング蛍光プローブやシナプス観察蛍光プローブ、老人斑・神経原線維変化 選択的蛍光プローブなどをラインアップしております。

学術コンテンツ

神経細胞・神経回路のイメージングに使用される蛍光プローブ

神経細胞や神経回路のイメージングには、一般的にニューロントレーサー (神経トレーサー)と呼ばれる試薬が使用されます。かつては放射性アミノ酸やペルオキシダーゼ(HRP)が使用されていましたが、現在は蛍光色素が使用されています。

ニューロントレーサーには順行性トレーサーと逆行性トレーサーがあります。順行性トレーサーは、神経細胞の細胞体に色素を注入し、細胞体→神経終末に向かう順行性軸索流に色素を乗せて神経細胞を標識します。一方、逆行性トレーサーは神経終末に色素を注入し、神経終末→細胞体に向かう逆行性軸索流に色素を乗せて標識します。

カルボシアニン色素は細胞膜などの脂質中で安定かつ強い蛍光を発することからニューロントレーサーとして多用されています。幼若動物では順行性・逆行性トレーサーどちらとしても利用できますが、神経系の髄鞘化が進んだ成体では順行性標識が難しくなることが知られています。当社が販売しているDiIC18(3)は励起波長548 nm、蛍光波長565 nmのカルボシアニン色素の1種です。その他のニューロントレーサーとしてはFluoro-Gold(逆行性トレーサー)や標識デキストラン(順行性・逆行性トレーサー)などがあります。

ヒドラジン誘導体であるルシファーイエローも神経細胞のイメージングに用いられる蛍光色素です。ジアミノベンジジン(DAB)存在下でルシファーイエローを注入した神経細胞に強い青色励起光をあてると、光酸化反応によってDABが黒色に変化します。これはフォトコンバージョン法と呼ばれ、電子顕微鏡での観察にも適用可能な神経細胞の可視化方法として知られています。

シナプスのイメージングに使用される蛍光プローブ

シナプスは神経伝達物質の放出と小胞のリサイクリングを行うため、エキソサイトーシスとエンドサイトーシスを頻繁に繰り返しています。 そのためシナプスのイメージングにはエンドサイトーシス小胞を標識できる色素が利用されています。

蛍光カチオン性スリチル色素はエンドサイトーシス小胞を標識可能な蛍光色素として、シナプスのイメージングに使用されています。一方の端に親水性の高いカチオン荷電ヘッドグループがあり、もう一方の端に親油性のテールがあります。水溶液中では非蛍光性ですが、細胞膜などの脂質と結合すると強い蛍光を発します。色素は神経伝達物質とともに小胞から放出され、蛍光シグナルの減少を引き起こすので、蛍光強度の変化は、エンドサイトーシス/エキソサイトーシスまたはシナプス活性の量を反映しているとされています。

代表的な蛍光カチオン性スリチル色素はFei Maoらによって開発されたFM®色素であり、当社の シナプス観察蛍光プローブ であるViVidFluorやBiotium社の 神経終末染色プローブ であるSynaptoGreen™およびSynaptoRed™がこれに相当します。

※FM®は、Life Technologies社の登録商標です。

参考文献

三輪佳宏 編:「実験がうまくいく蛍光・発光試薬の選び方と使い方」 (羊土社) (2007)