細胞内シグナル伝達

細胞は外部刺激を受容し、その情報を様々な分子を介して伝達しながら遺伝子発現調節やタンパク質の活性制御などを行います。細胞内シグナル伝達は細胞増殖、分化、細胞死など細胞レベルの現象から、発生、代謝、免疫などの個体レベルの現象まで多岐にわたって関与しています。細胞内シグナル伝達の異常はがんを始めとした様々な疾患を引き起こすことから創薬研究において重要なターゲットとされています。

当社では、Kinase/ADP活性を蛍光で測定する「Fluorospark®(フルオロスパーク) Kinase/ADP Multi-Assay Kit」、細胞内カルシウム量を蛍光で測定する「Calcium Kitシリーズ」を販売しています。

学術コンテンツ

タンパク質翻訳後修飾によるシグナル伝達

タンパク質の翻訳後修飾には、タンパク質の立体構造を変化させ、その活性を制御する役割があります。もっともよく知られる翻訳後修飾はりん酸化ですが、その他にもユビキチン化やグリコシル化、アセチル化など様々な翻訳後修飾がシグナル伝達に関与していると考えられています。

タンパク質のりん酸化はキナーゼという酵素によって触媒されています。キナーゼによる代表的なシグナル伝達経路であるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードでは、増殖因子などの細胞外シグナルが受容体に結合するのをきっかけにMAPKKK→MAPKK→MAPKの順にりん酸化され、さらに下流の転写因子などのりん酸化を介して細胞増殖に関わる遺伝子の発現を制御します。

MAPKのような細胞増殖に関与するキナーゼに異常が生じると、細胞のがん化が引き起こされます。そのため創薬のシーズ探索ではキナーゼ活性を制御する化合物を見つけるためのスクリーニングが行われてきました。当社のFluorospark® Kinase/ADP Multi-Assay Kitはハイスループットスクリーニングに対応しており、キナーゼを標的とした創薬シーズの探索が可能です。

カルシウムイオンによるシグナル伝達

カルシウムイオンは細胞内シグナル伝達においてセカンドメッセンジャーの役割を担っています。通常、細胞内のカルシウムイオンは低濃度に保たれていますが、細胞膜が脱分極したり、神経伝達物質などのリガンドが受容体に結合すると細胞外のカルシウムイオンが細胞内に流入します。

また細胞小器官である小胞体にもカルシウムイオンは貯蔵されており、外部刺激がきっかけで生成されたイノシトール三リン酸(IP3)が小胞体上のIP3受容体に結合するとカルシウムイオンが放出されます。

細胞内でカルシウムイオン濃度が上昇すると、カルシウムイオンはカルモジュリンと呼ばれるカルシウム結合性タンパク質と結合し、その複合体はカルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼを活性化させ、さらに下流へとシグナルを伝達します。

カルシウムイオンによるシグナル伝達は筋肉の収縮や神経伝達において重要なシグナル伝達経路ですが、細胞内のカルシウム濃度は非常に低濃度であるため、細胞内のカルシウム動態を調べることは困難でした。しかし1980年代にfura-2を始めとする細胞膜透過性の蛍光カルシウム指示薬が登場して以降、細胞内のカルシウム動態を測定することが可能になりました。

当社では細胞膜透過性の蛍光カルシウム指示薬であるFluo 4-AMやFura 2-AMを使用した同仁化学研究所の細胞内カルシウム測定キットを取り扱っております。Fluo 4-AMやFura 2-AMにはアセトキシメチル基(AM基)で保護されており、細胞透過性が高められています。細胞を透過したカルシウム指示薬は細胞内のエステラーゼにより加水分解を受け、細胞外に流出しにくくなります。

参考文献

同仁化学研究所 はじめての細胞内Ca2+測定プロトコル ~カスタマーサポートの視点から~
井上純一郎, 武川睦寛, 徳永文稔, 今井浩三 編, シグナル伝達研究最前線2012, 羊土社, 2012