フローサイトメトリー用抗体

フローサイトメトリーは細い流路に細胞を流し、レーザー光を当てて反射される蛍光を測定することで、細胞の情報を解析することができる装置です。当社はフローサイトメトリー解析に使用できる標識抗体を取り揃えています。

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フローサイトメトリーとは?

フローサイトメトリー(Flow Cytometry / FCM)は、細い流路に細胞を流し込み、整列して流れる細胞へ順にレーザーを照射し、生じた散乱光や蛍光を検知することで、細胞を検出・分析する手法です。複数種の細胞群が含まれるサンプルから目的の細胞群を解析することができます。フローサイトメトリーを行う装置をフローサイトメーターと呼びますが、フローサイトメーターには細胞の分析に特化した「セルアナライザー」と細胞の分析に加え、分取の機能も持つ、「セルソーター」が存在します。セルソーターを用いたFluorescence Activated Cell Sorting (FACS)技術の開発により、目的の細胞を生きた状態で分離・回収することが可能になりました。

フローサイトメトリーの特長は、不均一な細胞集団で構成されるサンプルにおいて、個々の細胞レベルの情報が、ハイスループットで得られることです。このような特長を生かして、免疫表現型解析や希少細胞の検出などで用いられています。近年では、マルチカラーレーザーの搭載や蛍光色素のラインアップ拡大、解析ソフトウェアの進歩により、多数の細胞マーカーを同時に検出することが可能になっています。

※ BD FACSはBecton, Dickinson and Companyの登録商標です。

フローサイトメトリーに使用されるプローブ

フローサイトメトリーでは、細胞を標識するために、標的に特異的に結合する分子(抗体など)に蛍光色素などを結合させたプローブが必要となります。プローブの条件として、蛍光色素の波長がフローサイトメーターで励起および検出可能な波長であることはもちろん、正確な解析を行うために、プローブが目的の分子に特異的に結合することや、蛍光強度が測定したい物質の量と比例することが重要です。

最も良く使用されるプローブは抗体です。標的に対する特異性や結果の再現性などの理由から主にモノクローナル抗体が使用されます。免疫表現型解析などでは表面抗原であるCD (Cluster of Differentiation)抗原を認識する抗体が用いられています。抗体に結合させる蛍光色素には相対蛍光強度が高く、S/N比が高いアロフィコシアニン(Allophycocyanin / APC)やフィコエリスリン(Phycoerythrin / PE)などが良く使用されています。抗体1分子に結合するAPCやPEは平均1分子です。その他の蛍光色素にはFITCやPE-Cy5、PerCPなどがあります。抗体は価格が高いのが難点ですが、TONBO Bioscience社であれば、フローサイトメトリーのリーディングカンパニーが供給する抗体と同じ高品質なフローサイトメトリー用抗体を、より手頃な価格で購入することができます。

抗体の他にもAnnexin VやMHCクラスI-ペプチド四量体(テトラマー)などが表面抗原に対するプローブとして使用されます。

CD (Cluster of Differentiation)

ヒト白血球の細胞表面には、白血球の系列や分化段階を識別できる抗原が数多く存在します。白血病や免疫不全症の診断、臓器移植の際に生じる移植片対宿主反応(GVH)の抑制などを目的に、それぞれの抗原に特異的なモノクローナル抗体が多数作製されてきましたが、抗体の数が増えるにつれ、それらを分類・整理する必要がでてきました。

CD分類は上記のような背景の中で確立された同一の細胞集団または同一の膜抗原あるいはエピトープを認識するモノクローナル抗体をまとめたカテゴリであり、現在では白血球以外の造血系細胞や非造血系細胞まで拡大されています。本来はモノクローナル抗体のカテゴリを指しますが、今ではそのモノクローナル抗体が認識する抗原という意味でも使われています。

細胞によって発現している種類が異なるCD抗原は、フローサイトメトリーにおける細胞の標識に適しており、フローサイトメトリー用として様々なCD抗体が販売されています。

参考文献

新保敏和, 石黒精 著: 「CD分類ハンドブック」 (癌と化学療法社) (1992).
中内啓光 監修: 「新版 フローサイトメトリー自由自在」(秀潤社) (2004).