SeeDB
今井 猛博士らにより、水溶性で生体組織の形態や組成、蛍光蛋白質および蛍光神経トレーサーの蛍光を損なうことなく短時間で簡便に脳などの生体組織を透明化する方法SeeDB(See Deep Brain)が開発されました。SeeDBは、水とフルクトース、還元剤で構成されている製品になります。
SeeDB法は、共焦点顕微鏡や2光子励起顕微鏡を使用して深部イメージングが可能であり、蛍光タンパク質・神経トレーサーを用いての蛍光神経回路の全貌解明や定量解析のなど様々なアプリケーションに利用することができます。
SeeDB法に関する詳しい情報については、今井 猛博士らによるウェブサイトSeeDB Resourcesを参照ください。
HPデータ:理化学研究所 多細胞システム形成研究センター(理研CDB) 感覚神経回路形成研究チーム 柯孟岑研究員、今井 猛先生(現 国立大学法人 九州大学)より提供
参考文献
- Ke, M. T., Fujimoto, S. and Imai, T. : Nat Neurosci, 16 (8), 1154(2013).
- Ke, M. T., Fujimoto, S. and Imai, T.: Bio-protocol, 4(3), e1042(2014).
- Ke, M. T., and Imai, T. : Curr Protoc Neurosci, 66, 2.22.1-2.22.19(2014).
プロトコル例
SeeDB法について、脊椎動物の様々な組織に対して使用することができますが、マウス脳を例に紹介します。
1.固定
① マウス脳を4 % パラホルムアデヒド/PBSで 4 ℃で一晩固定する。
② サンプルをPBSで3回洗浄する(各10分間)。
2.透明化処理
③ サンプルを20 mLのSeeDB:20 w/v% Fructose Solutionが入った50 mLコニカルチューブに入れる。
チューブは室温下、ローテーターで4-8時間転倒回転する(約4 rpm)。
脆弱なサンプルやスライスの場合にはシーソーシェーカーを用いても良いです(約17 rpm)。
④ サンプルをSeeDB:40 w/v% Fructose Solutionの入った50 mLコニカルチューブに移し、室温で4-8時間転倒回転する。
⑤ サンプルをSeeDB:60 w/v% Fructose Solutionの入った50 mLコニカルチューブに移し、室温で4-8時間転倒回転する。
⑥ サンプルをSeeDB:80 w/v% Fructose Solutionの入った50 mLコニカルチューブに移し、室温で12時間転倒回転する。
⑦ サンプルをSeeDB:100 w/v% Fructose Solutionの入った50 mLコニカルチューブに移し、室温で12時間転倒回転する。
⑧ サンプルをSeeDBの入った50 mlLニカルチューブに移し、室温で24時間転倒回転する。
※ 最大48時間まで延ばすことが可能。
※ うまく透明化できている場合、光にかざすと組織が透明になっているのが確認することができる。
3.観察
⑨ SeeDB処理した脳サンプルを共焦点レーザー顕微鏡若しくは2光子励起顕微鏡を用いて観察する。
注意・ポイント
サンプルはSeeDB液でマウントしてください。SeeDBを用いて透明化処理したサンプルの屈折率は1.49と高くなります。このため、対物レンズにはグリセリン浸レンズ、油浸レンズ、透明化用レンズが適していますが、水浸レンズでも深さ2 mm程度までであれば問題ありません。イマージョンには各メーカー推奨のイマージョン液をご使用ください。SeeDB液をイマージョンに用いないでください。ドライレンズ(屈折率1.0)や水浸レンズ(屈折率1.33)を用いて画像取得する場合は、深さの数値を補正する必要があります(補正式については参考文献参照)。
処理例

図1.SeeDBを用いた生体試料の透明化
左から順に、マウス胎仔(胎仔12日)、新生仔マウス(生後3日)の全脳、生体のマウス脳スライス(8週齢、厚さ2mm)をSeeDBで透明化処理した例。観察例
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図2.2光子励起顕微鏡を用いて取得したThy1-YFP-Hマウス(10週齢)の脳の蛍光画像
オリンパス社製 多光子専用対物レンズ:XLPLN10XSVMPを用いて観察した例。 -
図3.共焦点顕微鏡を用いて取得したThy1-YFP-Hマウス(10週齢)の脳の蛍光画像
オリンパス社製 シリコーン浸対物レンズ:UPLSAPO 10X2を用いて観察した例

図4.2光子励起顕微鏡を用いて取得したThy1-YFP-Hマウス(10週齢)の脳の蛍光画像
オリンパス社製 多光子専用対物レンズ:XLSLPLN25XGMPを用いて観察した例。スケールバーは100 µm。

図5.マウス脳を固定後DiIで標識し、SeeDBを用いて透明化した例
左:嗅球僧帽細胞樹状突起(横から見たもの)、右:嗅球僧帽細胞樹状突起(上から見たもの)オリンパス社製 シリコーン浸対物レンズ:UPLSAPO 20Xを用いて観察した例。
Thy1-YFP-H マウス脳 イメージング動画
左:イメージングエリア 1.2 mm×1.2 mm×3.3 mm
右:イメージングエリア 4 mm×5 mm(8×10 tiles) 2 mm厚
製品一覧
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